途上国への技術移転の名目で、安い労働力として使われてきた技能実習生。今、その半数以上を占めるのがベトナム人だ。劣悪な労働環境を苦に失踪するケースが後を絶たない。彼らはなぜ逃げ出し、コロナ禍のなか、どこでどう暮らしているのか。取材を進めていくと、最近、事件の舞台にもなった北関東の小さなアパートにたどりついた。その辺り一帯は、「失踪村」と呼ばれていた。
まだ冷たい風が吹いていた2月11日の昼、JR高崎線の本庄駅から車で15分ほどの場所にある木造2階建てのアパートを訪ねた。周囲には、昔からの畑や養鶏場に交じって、鉄鋼やプラスチック工場が集まる工業団地が点在する。畑でお年寄りが農作業をしているくらいで、人通りはあまりなかった。
ここは群馬と県境を接する埼玉県上里町。上越新幹線が通る北関東の小さな町だ。関越自動車道の「上里サービスエリア」がある場所と言えば、分かる人もいるかもしれない。
アパートの一室には、実習先から失踪した元技能実習生のベトナム人男性ブー・バン・ズンさん(36)が暮らしていた。
拡大する「失踪村」で暮らすブー・バン・ズンさん=2021年2月19日、埼玉県上里町、内田光撮影
案内してくれたのは、NPO「アジアの若者を守る会」代表の沼田恵嗣さん(59)と、ベトナム出身の塩田ユンさん(39)だ。ズンさんから未払い賃金の問題で相談を受けていた。
途上国への技術移転の名で安い労働力として働かされてきた技能実習生。その半数以上はベトナム人だ。劣悪な労働環境などから失踪する例が後を絶たない。「失踪村」にたどりついた元実習生たちから何が見えるのか。
「このあたりは失踪村だよ」…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル